■このページでは、両立支援等助成金〔育児休業等支援コース(業務代替支援 A新規雇用)〕の支給要件について詳しく解説しています。
この制度は、対象となる育児休業(*)開始日が令和5年12月31日以前の場合に申請できます。
育休(*)開始日が令和6年1月1日以降の場合は以下の新制度(育休中等業務代替支援コース)の支給要件をご参照下さい。
(*)産休に続けて育休を取得した場合は産後休業
これから解説いたします「業務代替支援A 新規雇用」の助成金制度については、令和5年12月31日までに開始した育児休業(産休に続けて育休を取得した場合は産後休業)のみを対象として申請することが出来ます。
令和6年1月1日以降に開始した育児休業(産休に続けて育休を取得した場合は産後休業)に対しては、新たに開始となる「育休中等業務代替支援コース」に基づき申請を行うこととなりますのでご注意下さい。
◆育休関連コースの助成金については、原則、以下にあてはまる中小企業事業主のみが申請を行うことができます。
小売業(飲食業を含む) | 資本金又は出資額が 5千万円以下、または常時雇用する労働者数が 50人以下の事業 |
---|---|
サービス業 | 資本金又は出資額が 5千万円以下、または常時雇用する労働者数が 100人以下の事業 |
卸売業 | 資本金又は出資額が 1億円以下、または常時雇用する労働者数が 100人以下の事業 |
その他 | 資本金又は出資額が 3億円以下、または常時雇用する労働者数が 300人以下の事業 |
なお、上記いずれかの基準を満たす中小企業事業主であっても、労働関係法令に違反する等、別途定める不支給要件にあてはまる場合は申請することができませんのでご注意下さい。(詳細については以下の記事をご参照下さい)
「業務代替支援 A新規雇用」の助成内容
この申請は、育休取得労働者の代替要員を新規雇用(派遣を含む)した場合に、「業務代替支援 B手当支給等」と合算し、1事業主1年度あたり、対象育休取得者10人までを限度として、初回申請年度から数えて5年度に渡り複数回行うことができます。
育休取得者の業務代替要員を新規雇用(派遣を含む)した場合に・・・
対象育休取得者1人あたり:50万円 + 有期雇用労働者加算(*)10万円
が支給されます。
(*)育休取得者が「有期雇用労働者」である場合に加算が行われます。
なお、上記の支給申請を行うためには、業務代替の対象となった育休取得者が、
- 連続3カ月以上の育休を取得するか、
- 連続1か月以上の育休を合計3か月以上取得し、
- 職場復帰後、継続雇用期間が6カ月以上経過している
必要があります。
さらに、厚生労働省サイト「両立支援のひろば」に所定の育休取得実績を公表した場合・・・
2万円の加算(1事業主1回限り*)
を受けることができます。(「育休取得時」あるいは「職場復帰時」に加算して申請済の場合は除きます)
なお、育休取得実績の公表すべき具体的な内容については、以下の記事で解説しております。
それでは、具体的な申請準備の方法について見ていきましょう。
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Ⅰ.助成対象労働者の育休開始日前日まで(※)に、以下を行う必要があります
(※)産休終了後に続けて育休を取得する場合は、産休開始日前日まで
育休開始日前日までに行わなければならないこと
② 「育児・介護休業法」の水準を満たす「就業規則」作成と社内周知
(上記の「就業規則」は「労働協約」もしくは「育児休業規程等(常時10人未満の場合)」 に読み替えることができます〔以下同様〕)
③ 育休取得者を原職(休業前と同じ職務)に復帰させる旨を、労働協約又は就業規則に規定
(間に合わない場合は、職場復帰時までに規定)
④「次世代育成支援対策推進法」に基づく「一般事業主行動計画」の策定と所轄労働局への届出
(遅れて申請する場合も、職場復帰後6カ月以内には届出・公表・周知を完了している必要があります)
~なお、助成対象となる育休を取得する労働者は、「雇用保険被保険者」でなければなりません
助成金支給申請時に必要となる各種書類の作成状況確認
■助成金支給申請の際には、以下の書面提出が求められますので、しっかり整備されているか事前に確認しておく必要があります。
A)「育休取得者」及び「業務代替者」両方の「雇用契約書」「労働条件通知書」「労働者派遣契約書」等のいずれか
~ 「所属・部署・職務」「所定労働時間」「所定労働日または所定労働日数」を証明するものとして提出します。
- 「育休取得者」については、休業前後の状況がそれぞれ分かるものが必要です。
- 「業務代替者」については、新規雇入れ日の分かるものが必要です。
- 「有期雇用労働者加算」を申請する場合は、育休取得者が有期雇用労働者であることを確認できるものが必要です。
玉突き代替(*)の場合は、育休取得者の業務をいったん代替した者の分についても提出が必要です。
(*)玉突き代替:育休取得者の業務をいったん既存メンバーが代替し、既存メンバーの業務を新規雇用者が代替すること
上記の書面のみで証明できない場合には、以下の中から必要なものを選択し提出しなければなりません。
- 会社休日カレンダー(所定労働日・所定労働日数を確認できるもの)
- 勤務シフト表(シフト制勤務の場合必須)
- 配属された部署、職務が分かる組織図
B)「育児休業申出書」(育休期間が変更されている場合は「育児休業期間変更申出書」)
~「育休取得者」から提出されたことを確認します。
C)「育児短時間勤務の申出書」(職場復帰後、「育児短時間勤務制度」を利用した場合のみ)
~「育休取得者」から提出されたことを確認します。
D)「育休取得者」の「出勤簿」または「タイムカード」と「賃金台帳」
~「育休前1か月分」かつ「復帰後6か月分」の就業実績、および「育休期間中(3カ月以上)」の休業状況を確認できるものが必要です。
~「育休取得日」について賃金控除が行われている月の「賃金台帳」には、計算根拠が分かる任意書式の添付が必要です。
注)在宅勤務日については、業務日報等により勤務実態(勤務日・始業終業時刻)が確認できる日のみ就業した日と判断します。
E)「業務代替者」の「出勤簿」または「タイムカード」と「賃金台帳」
~「業務代替前1か月分」及び「業務代替期間3か月分」につき、それぞれ提出が必要です。
~ 玉突き代替の場合、育休取得者の業務をいったん代替した者の分については提出不要です。
注)在宅勤務日については、業務日報等により勤務実態(勤務日・始業終業時刻)が確認できる日のみ業務を代替した日と判断します。
F)「母子手帳」(子の出生を証明する部分)
~助成対象となる労働者に「養育対象となる子」がいることと「子の出生日」を証明するために提出します。
(出生した子を助成対象となる労働者の被扶養者とした場合は「子の健康保険証」提出でも可)
「育児・介護休業法」の水準を満たす「就業規則等」作成と社内周知
(上記の「就業規則」は「労働協約」もしくは「育児休業規程等(常時10人未満の場合)」 に読み替えることができます〔以下同様〕)
■助成対象となるためには、最低限、以下の事項を「就業規則等」に定めておく必要があります
A)「育児休業制度」について(出生時育児休業制度・パパママ育休プラス制度等も含む)
B)「育児のための所定労働時間短縮措置」について
C)「育児休業」に係る手続や賃金の取扱等について
~「規則の内容は育児・介護休業法に定める通りとする」といったような「委任規定」を就業規則に定めているだけの場合は、助成対象となりません
~常時雇用する従業員数が10人未満で就業規則の作成・届出が義務付けられていない会社の場合は、上記A)~C)が明文化された「育児休業規程」等、就業規則に準ずるものが労働者に周知されていることが必要です
~A)およびB)については助成金支給申請の際、規定した年月日を報告する必要があります
◆なお、育休取得者が勤務する事業場と本社において、別々に就業規則等を定めている場合は、その両方の写しが必要となります。
■「育児・介護休業法」の水準を上回る制度についても、必ず「就業規則等」に規定しなければなりません
育休期間を有給扱いにする等、法律を上回る制度を運用した場合も、「就業規則等」に裏付けがないと、助成対象から外される場合があります。
■ 助成金申請の際には、最新の「育児・介護休業法」を反映した規則に改定しておかなければなりません
育休取得者を原職(休業前と同じ職務)に復帰させる旨を、労働協約又は就業規則等に規定
育休取得者を原職(休業前と同じ職務)に復帰させる旨を、労働協約又は就業規則等に規定しておく必要があります。
育休開始時までに間に合わない場合は、遅くとも職場復帰時までに規定しておかなければなりません。
「次世代育成支援対策推進法」に基づく「一般事業主行動計画」の策定と所轄労働局への届出
(「プラチナくるみん認定」を受けている事業主は、策定・届出ともに不要です)
■「一般事業主行動計画」は、助成金の支給申請日までに、策定・届出・公表及び周知まで終了していなければなりません
「業務代替支援 A新規雇用」の申請を行うタイミングは、育休取得者の職場復帰後、継続雇用期間6カ月経過の際となりますので、それまでには「一般事業主行動計画」の公表及び周知が完了していなければなりません。
育休開始日前日からは、かなり期間が空きますが、本来は「一般事業主行動計画」の届出後に育休取得を推進するのが望ましいと考えられますので、休業を開始する前までには計画の策定を完了し、余裕を持って所轄労働局への届出を済ませておくことをおすすめします。
Ⅱ.確保した代替要員は、以下の全てを満たしている必要があります
確保した代替要員が満たしていなければならないこと
育休取得者の業務を代替している
- 育休取得者が複数の業務を兼務していた場合、当該業務を複数の代替要員が分担すること(業務の種類毎に分担する場合など)も認められます。
- 複数のパート社員等を新たに雇用し、育休取得者の業務を複数名でカバーしても構いません。
- ただし、複数の者が業務を代替した場合は、複数の代替要員の「所定労働時間の合計」および「勤務した期間の合計」が、「育休取得者が通常勤務した場合」と概ね同等でなければなりません。
- 育休取得者が、有資格者しか従事できない業務に携わっていた場合は、当該資格を保有する代替要員を確保しなければなりません。
- 育休取得者に対し支払っていた業務手当については、代替要員にも支払われていなければなりません。
(雇用形態の違いを理由に当該手当を支払わないことは認められません) - 育休取得者が行っていた業務はその全てを新規雇用した業務代替者が行っていなければなりません。
育休取得者と同じ事業所、部署に勤務している
- 育休取得者の業務が別の事業所に移管された場合や、育休取得者がテレワーク等により勤務場所を限定しない働き方をしていた場合は、勤務場所が異なっていても構いません。
ただし、育休取得者と同種の業務が他の事業所にあるということだけで、実際に業務を代替したものでない場合は認められません。
代替要員の所定労働時間が、概ね育休取得者と同等である
■代替要員の所定労働時間の方が短い場合は、以下を満たしていなければなりません。
~代替要員の所定労働時間の方が長い場合は問題ありません。
【1カ月の所定労働日数が育休取得者と同じである場合】
- 育休取得者と代替要員との「所定労働時間の差」が、1日あたり1時間以内であること
【1カ月の所定労働日数が育休取得者と異なる場合】
- 育休取得者と代替要員との「所定労働時間の差」が、1週間あたり1割以内であること
(計算例)
- 育休取得者の1日所定労働時間:8時間
- 業務代替者の1日所定労働時間:8時間
- 育休取得者の1カ月所定労働日数:20日
- 業務代替者の1カ月所定労働日数:19日
- 1カ月間の暦日数31日
の場合・・・
▼
- 育休取得者の1週間あたり所定労働時間:8時間×20日×7/31=36.13
- 業務代替者の1週間あたり所定労働時間:8時間×19日×7/31=34.32
▼
- 1週間あたり所定労働時間の差:(36.13ー34.32)÷36.13=5.01%<10%
*上記計算例から1カ月あたりの所定労働日数の差は、ほとんど許容されないことが分かります。
■なお、複数の短時間労働者に代替業務を担わせる場合は、複数の短時間労働者の各所定労働時間を合計した時間と、育休取得者の所定労働時間を比較することにより判定します。
「新たな雇い入れ」又は「新たな派遣」により確保されたものである
■ 既にいる同僚の労働者が業務を代替した場合は、「業務代替支援 B手当支給等」の対象になる可能性があります。
なお、「業務代替支援 A新規雇用」と「業務代替支援 B手当支給等」との併給はできませんのでご注意下さい。
育休取得者から「本人又は配偶者の妊娠事実」の報告を受けた日以後に確保した代替要員である
■ 代替要員の確保は「妊娠事実」を知った日以降に行ったものでなければなりません。
業務代替期間が「最低でも連続して1カ月以上」且つ「合計して3カ月又は90日以上」ある
- 単発的な短期の欠勤日(各月の所定労働時間の10%未満)
- 法に基づく休業日(※)
- 雇用調整助成金の支給対象ではあるが、代替要員について助成金を受給しなかった休業日
は就業したものとみなされます。
(※)法に基づく休業日
・年次有給休暇、産休、育休、介護休業、子の看護休暇、介護休暇、母性健康管理措置による休業等
■ 在宅勤務日については、業務日報等により「勤務日」「始業・就業時刻」が確認できる日のみ業務を代替した日と判断します。
なお、同僚の労働者が「育休取得者の業務」を代替する一方で、新たに「同僚の労働者の業務」を代替する者を確保した場合(いわゆる「玉突き」)も支給対象となります。
その場合は、「育休取得者」を「同僚の労働者」に読み替えて要件を判定します。
Ⅲ.助成対象労働者は、連続1カ月以上の育休を合計3カ月以上取得する必要があります
助成対象となる休業要件について
■産後休業後に続けて育休を取得する場合は、産後休業期間も含めて判定することができます。
■育休期間中の制度運用や賃金等の取扱いは、「就業規則等(又は労働協約)」に則り行われていなければなりません
Ⅳ.育休終了後、助成対象労働者に対し以下を行う必要があります
育休終了後に行わなければならないこと
原職(休業前と同じ職務)等への職場復帰
■原則、「原職(休業前に勤務していた課・係などの部署及び、休業前と同一の職務)」に復帰させる必要があります
ただし、「原職」ではなく「原職相当職」へ復帰した場合も支給対象となります。
「原職」あるいは「原職相当職」以外へ復帰した場合であっても、それが本人の希望に基づいており、当該希望内容が「面談シート」の記録により確認できる場合も支給対象となります。
【「原職相当職」とは以下のa・b両方に該当するものを指します】
a.職業分類の中分類(厚生労働省編の職業分類)が同一である
休業期間中の組織改編等により、休業前と異なる職務に復帰し、分類が一致しなくなった場合であっても、客観的合理性が認められる場合や、休業前職務内容と相当程度関連性が高い場合は「原職相当職」と認められます。
b.休業前と同一の事業所に勤務している
育児との両立を理由に、本人の希望により異なる事業所に復帰した場合についても、客観的合理性が認められ、且つ、勤務内容・処遇等が休業前と変わらない場合は「原職相当職」と認められます。
■育休前に、助成対象労働者からの申請に基づいて「妊娠期間中の軽易業務への転換」を実施した場合の「原職」とは、「軽易業務転換前の通常業務」のことを指します
■職制上の地位が休業前を下回ってはなりません
職制上の地位に係る手当が、復帰後に支給されていない場合は助成対象となりません。
■復帰後の所定労働時間を短縮する場合は、育児短時間勤務制度利用の申出書が必要です
・育児短時間勤務制度を適用する場合は、当該期間中の賃金計算方法を確認できる書類も必要となります。
■ 職場復帰後、在宅勤務を行った場合は、以下を満たしている場合に限り就業した日としてカウントします
- 業務日報等により勤務実態(勤務日、始業・終業時刻)が確認できること
雇用保険被保険者として6か月以上の継続雇用
■育休からの職場復帰後、6か月間の継続雇用期間中に5割以上就業していなければなりません
当初就業予定日数(*)に対し、実際に何日就業したかの割合で判定します。
(*)育児短時間勤務制度に準じ「所定労働日数を減ずる制度」を導入し適用した場合には、当該適用後の日数と比較します
なお、以下の休業日については就業した日としてカウントします。
- 雇用調整助成金の対象となる休業日(助成金の支給対象となった日も含む)
- 年次有給休暇、子の看護休暇、介護休暇、母性健康管理措置に基づく休暇等、法に定められた休業日
■6か月間に雇用形態や給与形態の不合理な変更を行った場合、助成金は支給されません
以上を確認できた後、「業務代替支援 A新規雇用」の助成金支給申請手続きを行うことができます。
なお、育休取得者が「有期雇用労働者」である場合、支給額の「加算」措置を受けることができます。
ただし、育休取得者が、休業開始日前の6か月間に、「期間の定めのない労働者」として雇用されていた場合は「加算」対象となりませんのでご注意下さい。
さらに、「情報公表加算」の申請を行う場合は、別途「情報公表加算支給申請書」の提出が必要となります。
(申請期限は、育休終了日から起算して6か月を経過する日の翌日から2か月以内となります)
申請先は、本社等(※)の所在地にある労働局 雇用環境・均等部(室)となります。
(※)人事労務管理の機能を有する部署が属する事業所を指します
当事務所では、小規模企業の産休・育休をバックアップすべく・・・
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(東京しごと財団 働くパパママ育業応援奨励金 の併給申請サポートも可能です)
◆育休推進企業に向けては、育休関連経費を大幅に上回る助成金制度が準備されています。
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CLASSY. 2024年2月号(12/27発行) 「“私”のアドバイザー」欄に掲載されました
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