切迫早産・切迫流産等で産休前に休業する場合の対応

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このページでは、切迫早産・切迫流産等で産休前に休業する場合の対応や、産休前の休業が「出産手当金」「育休給付金」の支給額に与える影響について解説しています。

産休前に切迫早産や切迫流産等で休業が必要となった場合

切迫早産・切迫流産・重度の「つわり」(妊娠悪阻)等により、産休前に療養が必要となり、連続して3日以上休業した場合、休業4日目から傷病手当金を受給することができます。

ただし、症状が軽微で、医師が休業を要すると認めない場合を除きます。

療養による休業前12カ月間の標準報酬月額平均額の2/3程度を手当金として受給することができます。

支給は「上記金額÷30日」により日額で行われますが、休業期間には土日祝日等、会社所定の休日も含めることができます。

傷病手当金を受給できるのは、原則、勤務先を通じて健康保険に加入している方が対象となります。
(一部の業界団体で組織する国民健康保険組合は独自に傷病手当金の支給制度を設けている場合があります)

では、次に傷病手当金の支給申請方法について見ていきましょう。

傷病手当金の支給申請方法

傷病手当金支給申請書を勤務先の会社を管轄する全国健康保険協会支部に申請します。(健康保険組合加入の場合は当該組合へ提出します。)

まずは、休業者本人が、傷病名・初診日・発病時の状況・仕事の内容等を記入します。

次に、治療を受けた医療機関担当医師の意見書を受入します。(申請書に意見書受入欄が設けられています)

医師の意見受入後、申請書を勤務先の会社へ提出します。提出を受けた勤務先が、休業期間中の給与支払い状況を証明し、申請を行います。

傷病手当金が入金されるまでには日数を要します

傷病手当金の申請は、賃金締め切り期間が経過してからでないと、勤務先による賃金支払い状況の証明ができない仕組みになっています。

そのため、上記の賃金締め切り日が経過するまで、手続を完了させることができません。

(休業が長期に渡る場合、複数の賃金締切り期間に分けて申請していくことは可能です)

また、申請手続き完了後、銀行口座入金までは、さらに1カ月以上余裕を見ておいたほうが無難です。

◆「傷病手当金」の「手続き書類」「申請方法」については、全国健康保険協会ページへのリンクを貼らせていただきます。

病気やケガで会社を休んだとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会 (kyoukaikenpo.or.jp)

注)健康保険組合(組合健保)にご加入の場合は、各「組合健保」の手続きルールに従って下さい。

傷病手当金の支給対象期間中に給与が支払われた場合の支給調整

傷病手当金の支給対象日に給与が支払われている場合は、傷病手当金支給日額が支払われた給与日額を上回っている場合のみ、その差額が支給されます。

傷病手当金を上回る給与日額が支給されている場合、手当金は支給されません。

傷病手当金の支給対象期間中に賞与が支払われた場合

傷病手当金の支給対象期間中に賞与が支払われたとしても、手当金は減額されることなく、その全額を受給することができます。

療養による休業期間中に産休入りした場合

療養による休業期間中に産休入りした場合は、産休開始日の前日が療養期間の終了日となります。

傷病手当金の最長支給期間は支給開始日から1年6か月と定められていますが、傷病手当金の受給期間中に産休開始となった場合は、出産手当金が優先的に支給されることとなり、傷病手当金の支給は停止となります。

なお、傷病手当金と出産手当金の支給日額の算定方法は同一(*)となります。

(*)出産手当金に3日間の待機期間はありません

それでは、ここからは、産休開始日より前に休業すると「出産手当金」や「育児休業給付金」の支給額はどのように計算されることになるか見ていきましょう。

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産休前の休業が「出産手当金」「育児休業給付金」支給額に与える影響について

◆ここでは、産前産後休業(産休)と連続して、育児休業を取得する前提で解説します◆

切迫早産・切迫流産等で産休前に休業した場合、「出産手当金」支給額への影響は生じませんが、「育児休業給付金」支給額については減額となる可能性があります。

<育児休業給付金の支給額計算>

育児休業給付金は、育休開始日(*1)の前日から1カ月毎にさかのぼった各期間(例えば、3月10日が休業開始日であれば「2月10日~3月9日」・「1月10日~2月9日」・「12月10日~1月9日」・・・)において、

過去2年間(*2)に、雇用保険被保険者として賃金支払いの基礎となった日数が11日以上、もしくは賃金支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある期間=完全月(*3)が12か月以上ある場合にのみ支給対象となります。

(*1)
産前産後休業(産休)から引続き育休を取得した場合で、育休開始日の前日からさかのぼり判定した場合に支給要件を満たさない場合は、産休開始日の前日からさかのぼり判定することができます。

(*2)
休業開始日前2年間に、「疾病・負傷等やむを得ない理由」により引き続き30日以上「賃金の支払いを受けることができなかった期間」がある場合は、その期間を2年間に加算し、さかのぼった範囲内(合計4年間が上限)で判定することができます。

(*3)
賃金支払いの基礎となった日数が11日以上、時間数が80時間以上あったとしても算定期間が1か月に満たない場合(入社直後等)は完全月として数えませんのでご注意下さい。

一方、育児休業給付金の支給額は、産休開始日の直前にある「賃金締切り期間」のうち、

賃金支払いの基礎となった日数が11日以上、もしくは賃金支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある期間(=完全賃金月)6か月分を算定基礎期間とします。

上記、完全賃金月の要件を満たさない「賃金締切り期間」がある場合は、当該期間は含めず、完全賃金月のみで6カ月分となるようさかのぼり、算定基礎とする期間を定めます。(後述図解あり)

上記の「完全賃金月」6か月間に支給された賃金支払い総額(賞与以外に支払われた全ての金額)÷180日×30日(上限・下限額あり)を「休業開始時賃金月額」として、以下のとおり支給額を算定します。

「休業開始時賃金月額」×67% = 育休開始後180日目までの支給額

「休業開始時賃金月額」×50% = 育休開始後181日目以降の支給額

なお、育児休業給付金についてより詳しく知りたい方は、以下の記事をあわせてご参照下さい。

<切迫早産・切迫流産等で産休前に休業した場合>

産休前に休業した場合、育児休業給付金の支給額が減額される可能性があるのは、以下2つのケース両方に当てはまる場合です。

  • 休業開始時賃金月額の算定においてカウントする「完全賃金月」の中に、休業期間がある
  • 当該休業期間中は賃金が支払われていない、あるいは減額されている

ここで注目しておくべきポイントは、「完全賃金月」と判定された期間の中に休業期間がある場合にのみ減額となる可能性が生じる点です。

賃金の支払いの対象外となった休業期間日数を控除した結果、賃金支払い基礎日数が11日未満となった場合は、「完全賃金月」としてカウントされません。

この場合は、当該カウントされなかった「賃金締切り期間」の分は除き、産休開始日前日からさかのぼって新たな「完全賃金月」を追加し、算定基礎となる6か月間の賃金支払い総額を計算し直しますので、減額支給となる可能性は生じません。

育児休業給付金 休業開始時賃金月額の算定方法について

つまり、完全賃金月を判定する賃金締切り期間中に、少ない日数で休業した場合は、育児休業給付金の支給額が減額される可能性があるということです。

例えば、月給制の賃金計算において欠勤控除(日給月給制を採用)をしており、毎月の賃金支払い基礎日数を一律21日としている事業主の場合であれば、21日-11日=10日の範囲内で休業すると減額の可能性がでてきます。

なお、実際に減額支給とするか否かは、育児休業給付金の申請先である所轄公共職業安定所が決定することとなります。

よって、実際に給付金の支給申請を行う際には、上記要因を加味したうえで給付額の決定をしてほしい旨、備考に付け加え申請すべきでしょう。

ただし、必ずしも上記要因が加味されるとは限りませんので、受給者である従業員の方本人には、減額される可能性があるものとして説明しておくべきです。

<出産手当金の支給額計算>

冒頭で、切迫早産・切迫流産等で産休前に休業した場合も、「出産手当金」支給額への影響は生じないと述べましたが、その理由は以下のとおりです。

  • 出産手当金の算定基礎は、健康保険・厚生年金保険の標準報酬月額となっている
  • 標準報酬月額は、4・5・6月に支払われた賃金総額を算定基礎として「定時決定」が行われ、毎年1回、9月に改定される
  • 標準報酬月額は、「随時改定」の要件を満たさなければ、「定時決定」以外で減額改定されることはない
  • 随時改定が行われるためには、3カ月間の各月に渡り「固定的賃金部分」の引き下げがあり、かつ、残業代等の「非固定的賃金」も含む賃金総額(いずれの月も賃金支払い基礎日数が17日以上(*)あることが要件)も引下げられていて、さらに当該3カ月間の賃金総額平均額に対照する標準報酬月額等級も2等級以上の引下げに該当していなければならない

(*)特定適用事業所に勤務する短時間労働者の場合は11日以上

まずもって、切迫早産・切迫流産等で産休前に休業した場合に、上記を満たすような賃金引下げが起こるとは考えられません。

よって、産休前に休業したとしても「出産手当金」支給額への影響は生じないというわけです。

ちなみに、産前産後休業期間を対象として支払われる「出産手当金」の支給額(日額ベースで支給)は、全国健康保険協会加入事業主の場合、以下の計算式で算定することとなります。

支給開始日(≒産休開始日)以前における、連続した12か月間(*)各月の標準報酬月額平均額÷30日分×2/3

(*)12か月に満たない場合は・・・

  • 満たない月数分の各月標準報酬月額平均額
  • 全国健康保険協会が別途発表する、全加入者の標準報酬月額平均額(令和5年度=30万円)

のうち、いずれか小さい額÷30日分×2/3

なお、出産手当金についてより詳しく知りたい方は、以下の記事をあわせてご参照下さい。

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