子を養育中の労働者へ対する各種就業制限措置のポイント

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■このページでは、子を養育する労働者に対する就業制限措置の全体像が分かるよう、各措置のポイントのみ的を絞って解説しています。

はじめに

育児介護休業法は、子を養育する労働者から、あらかじめ申出がある場合、一定の期間、残業を禁止または残業時間制限を行うこと、育児短時間勤務制度を適用すること等、事業主が対処すべき各種の就業制限措置を定めています。

育児休業等の取得有無にかかわらず、子を養育する労働者より申出を受けた事業主には、定められた制限措置に則り対応する義務が生じますので、これらの措置について前もって十分把握しておくことは、労務管理上極めて重要です。

この記事では、これらの各就業制限措置について、全体像を把握しやすいよう、ポイントのみに的を絞り解説していきます。(各措置のより詳しい解説記事へはリンクを貼らせていただきます)

なお、制度の適用を受けたことを理由として、解雇・雇止め・減給等不利益な取扱いを行うことは、育児・介護休業法で禁止されています。

育児・介護休業法に違反した場合の罰則は定められておりませんが、違反が明らかとなった場合は、厚生労働省(都道府県労働局)の是正勧告が行われることとなり、勧告に従わない場合は企業名が公表されることとなります。

企業名が公表されると、ハローワークでの求人が受理されなくなる等の大きなペナルティーにつながる可能性がありますし、当局から求められた報告に対して報告を行わない場合や、虚偽報告を行った場合は20万円以下の過料に処されることもあります。

それでは、各措置のポイントについて解説していきます。

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育児にかかる休憩時間請求

1歳未満の生児を育てる(産婦である)女性労働者から請求があった場合には、授乳等のため、通常の休憩時間の他に1日2回、各30分の休憩を与えなければならないことが労働基準法によって定められています。

なお、1日の勤務時間が4時間以内の場合は、1日1回、30分の休憩を与えればよいこととなっています。

この措置が産婦である女性労働者のみを対象として定められている理由は、授乳の時間を考慮していることが背景にあります。

残業禁止措置<子が3歳(令和7年4月1日以降は小学校就学前)まで>

本人より請求があった場合、3歳未満(令和7年4月1日以降は小学校就学前)の子を養育する労働者に、所定労働時間を超えて残業をさせてはなりません。

ただし、事業の正常な運営を妨げる場合、事業主はこの請求を拒否することができます。

この場合の所定労働時間とは

就業規則等で事前に決定された労働時間のことを指します。
(1日8時間、1週40時間といった法定労働時間とは異なります)

事業の正常な運営を妨げる場合とは

事業の正常な運営を妨げる場合に該当するか否かは、その労働者の所属する事業場を基準として、担当する作業の内容・作業の忙しさ・代行する者を配置する難しさ等を考慮して客観的に判断すべきものとされています。

事業主は、その労働者が請求どおりに残業免除を受けることができるよう、通常考えられる相当の努力をすべきであり、単に所定外残業が事業運営を行う上で必要だという理由だけでは拒むことはできません。

対象労働者が残業制限の申出をする場合は、制限開始の1カ月前までに、1カ月から1年以内の期間を指定して事業主へ申出しなければなりません。
(この申出は何回でも行うことができます。)

この措置は、男女を問わず対象となりますのでご注意下さい。

(*)日雇労働者、労働基準法41条該当者(以下ご参照)は本制限の対象外となります。

労働基準法41条該当者

  • 管理監督者であって、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者
  • 農水産業従事者(林業を除く)
  • 監視など断続的労働従事者で労働基準監督署の許可を受けた者

また、以下の労働者については労使協定を締結することにより、制限措置の対象から外すことができます。

労使協定締結により残業制限の対象外とできる労働者

  • 入社1年未満の労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

ちなみに労使協定を締結しても、配偶者が専業主婦(夫)であることや、育児休業中であることを理由として制限措置の対象から外すことはできません。

なお、この「残業免除措置」については以下の記事で、より詳しく説明しています。

育児短時間勤務制度の適用<子が3歳になるまで>

事業主は、3歳未満の子を養育する労働者について、育児短時間勤務制度(1日6時間)を適用できるよう、あらかじめ就業規則等に定めておくよう求められています。

具体的には、3歳未満の子を養育する労働者からの請求に備え、あらかじめ「所定労働時間が6時間」となる勤務時間制度を設けておく必要があります。

上記6時間の制度を定めた上であれば、6時間を下回る制度(例えば5時間の短時間勤務)や6時間を上回る制度(例えば7時間の短時間勤務)をあわせて定めることも可能です。

このようにフレキシブルに「1日6時間の短時間勤務制度」のみならず「他の勤務時間による制度」もあわせて設定することが望ましいとして、より柔軟に勤務時間を選択できるよう、令和7年4月1日施行の改正育児介護休業法に指針が示されることとなりました。

なお、この制度には「事業の正常な運営を妨げる場合を除く」とする規定はなく、男女を問わず対象となりますのでご注意下さい。

また、以下の労働者は労使協定の有無にかかわらず、もともと育児短時間勤務制度の対象から除外されていることについても注意しておきましょう。

もともと育児短時間勤務制度から除外されている労働者

  • 日雇い労働者
  • もともと1日の所定労働時間が6時間以下の労働者
  • 管理監督者等、法41条該当者

上記に加え、以下の労働者については労使協定を締結することにより、育児短時間勤務制度の対象外とすることができます。

ちなみに、配偶者が「専業主婦(夫)であること」「育児休業中であること」を理由として育児短時間勤務制度の対象から除外することはできません。

労使協定により育児短時間勤務制度対象外とできる労働者

  • 入社1年未満の労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
  • 短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者
    (具体的な業務の範囲についても協定する必要あり)

短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務(一部例示)

  • 労働者数が少ない事業所において、当該業務に従事しうる労働者数が著しく少ない業務
  • 個人ごとに担当する企業、地域等が厳密に分担されていて、他の労働者では代替が困難な業務
  • 流れ作業方式や交代制勤務による製造業務であって、短時間勤務の者を勤務体制に組み込むことが困難な業務

また、労使協定で短時間勤務が困難な業務に従事する労働者を適用除外とした場合、代替措置として以下のいずれかの措置を講じなければなりません。

短時間勤務が困難な業務に従事する労働者への代替措置(以下のいずれかを実施)

  • フレックスタイム制度を導入する。
  • 時差出勤制度を制定し、始業・終業時刻の繰上げ、繰下げを行う。
  • 育休に準ずる制度を定め、子が3歳になるまで休業させる。
  • 事業所内保育施設を設置運営する。
  • 保育施設利用料の補助を行うなど、事業所保育施設運営に準ずるような便宜の供与を行う。

なお、令和7年4月1日以降は、上記の選択肢に「テレワーク制度の導入」を選択肢として加えることが義務化されます。

3歳未満の子を養育する労働者へ対する「育児短時間勤務制度」については、以下の記事でより詳しく説明しています。

残業時間数の制限<小学校就学前まで>

小学校就学前の子を養育する労働者が請求した場合、事業主は時間外労働協定等で定めた残業時間上限にかかわらず、1か月につき24時間、1年につき150時間を超える残業をさせてはなりません。

ただし、事業の正常な運営を妨げる場合、事業主はこの請求を拒否することができます。

ここでいう残業時間は、1日8時間・1週40時間を超える部分の法定残業を指します。
会社ごと個別に定める所定労働時間を超える部分の所定外残業のことではないことに注意しておきましょう。

この措置は、男女を問わず対象となります。

対象労働者が残業時間数の制限を申出する場合は、制限開始の1カ月前までに、1カ月から1年以内の期間を指定して事業主へ申出しなければなりません。
(この申出は何回でも行うことができます。)

なお、労使協定締結により、適用対象から追加で除外できる労働者はありませんが、以下の労働者については、もともと本制限措置の適用対象から除外されています。

本制限措置の対象から除外されている労働者

  • 日雇い労働者
  • 入社1年未満の労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
  • 管理監督者等の法41条該当者

ちなみに、配偶者が育休中や専業主婦(夫)であっても、本制限の対象から除外することはできません。

小学校就学前の子を養育する労働者に対する「法定外残業時間数の制限」については、以下の記事で、より詳しく解説しています。

深夜業の免除<小学校就学前まで>

小学校就学前の子を持つ労働者が請求したときは、事業主は原則として、午後10時から午前5時までの間に労働させてはなりません。

ただし、事業の正常な運営を妨げる場合、事業主はこの請求を拒否することができます。

この措置は男女を問わず、また、管理監督者等である法41条該当者も対象となりますのでご注意下さい。

対象労働者が深夜業の免除を申出する場合は、免除開始の1カ月前までに、1カ月から6か月以内の期間を指定して事業主へ申出しなければなりません。(この申出は何回でも行うことができます。)

なお、労使協定締結により、対象から追加で除外できる労働者はありませんが、以下の労働者については、もともと、この免除措置の対象から除外されています。

深夜業免除の対象から除外されている労働者

  • 日雇労働者
  • 入社1年未満の労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
  • 所定労働時間の全部が深夜にある労働者
  • 16歳以上の同居家族が以下の状況にある労働者
  • 月に4日以上深夜に就業していない
  • 心身の状況が子を保育できる状態にある
  • 6週間(多胎妊娠14週間)以内に出産予定でない
  • 産後8週間以内でない

なお、小学校就学前の子を養育する労働者に対する「深夜業の免除措置」については以下の記事で、より詳しく解説しています。

子の看護(等)休暇<小学校就学前(令和7年4月1日以降は小学校3年生修了前)まで>

小学校就学前(令和7年4月1日以降は小学校3年生修了前)の子を養育する労働者が申出した場合、子が1人の場合は1年間に5日まで、2人以上の場合は1年間に10日まで、病気やけがをした子の看護のため、または子に予防接種・健康診断を受けさせるため、休暇を取得させなければなりません。

また、令和7年4月1日以降は、感染症による学級閉鎖・入園式、入学式など子の行事参加を理由とした申出があった場合も休暇を取得させなければならないこととなります。(制度の名称も「子の看護休暇」から「子の看護休暇」制度に改められます。

なお、この制度には、「事業の正常な運営を妨げる場合を除く」とする規定はありません。

1年間の定義

1年間の定義は、通例では毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間を指しますが、決算年度としての1年間等、企業毎独自の取決めを就業規則に定めることもできます。

1年間に10日までの定義

1年間に10日までとは、子が2人以上である場合、子1人につき5日が限度という意味ではなく、2人の子のうち1人目の子で、10日取得することも可能という意味です。

対象となる労働者について

この制度は、男性労働者も対象となります。

また、管理監督者等の法41条該当者も対象となります。

日雇い労働者は対象外です。

なお、以下の労働者については、労使協定を締結することにより、対象から除外することができます。

  • 入社6か月未満の労働者(令和7年4月1以降は除外不可となります)
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

休暇付与の方法

子の看護(等)休暇は申出がある場合、1日単位又は時間単位で与えなければなりません。(時間単位とは1時間の整数倍をいいます)

ただし時間単位の取得が困難な業務に従事する労働者については、労使協定を締結することにより、時間単位取得の対象外とすることができます。(この場合、困難業務の範囲についても労使協定が必要です)

なお、令和3年1月1日より、1日所定労働時間が4時間以下の労働者を、1日単位での取得のみ可能な労働者とする規定は廃止となっています。

また、就業時間の途中から時間単位の休暇を取得し、就業時間の途中に職務へ復帰する、いわゆる中抜け休暇の可否については、事業主の判断で決定することができます。

休暇中の賃金支払い

子の看護(等)休暇を欠勤(無給)扱いにするか否かは、事業主が決定します。

なお、欠勤(無給)とする場合も子の看護(等)休暇は法律で定められた休暇ですので、「通常の欠勤」と「子の看護(等)休暇による欠勤」は別管理しなければなりません。

制度内容改定について

この制度内容については、制度の名称を「子の看護休暇」から「子の看護休暇」に改めたうえで・・・


取得事由を拡大し、「感染症による学級閉鎖」・「入園式、入学式など子の行事参加」等を追加


取得対象となる子の年齢を現在の「小学校就学前」から「小学校3年生修了時」まで引き上げ


労使協定により「勤続6か月未満の労働者を取得対象から除くことができる」規定を廃止

することにより、更なる制度内容の拡充が図られることとなっています(令和7年4月1日より施行されます)

子を養育する労働者に対する「子の看護(等)休暇制度」については、以下の記事でより詳しく解説しています。

以上が、 育児介護休業法に定められた、事業主が対処すべき各種就業制限事項となります。

なお、上記就業制限事項を一覧表にまとめますと以下の通りとなります。

養育する子の年齢事業の正常な運営を妨げる場合却下41条労働者労使協定除外もともと除外
①残業禁止★
所定労働時間超
3歳まで(令和7年4月1日以降は小学校就学前まで)OK対象外・入社1年未満
・1週2日以下
・日雇
②育児短時間勤務 3歳まで NG対象外・入社1年未満
・1週2日以下
・時短不可業務
(代替措置が必要)
・日雇
・1日6時間以下
③残業制限★
法定労働時間超
年150H・月24Hまで
小学校就学前までOK対象外なし・日雇
・入社1年未満
・1週2日以下
④深夜業制限★小学校就学前までOK対象なし・日雇
・入社1年未満
・1週2日以下
・深夜労働者
・同居人が養育可能
⑤子の看護(等)休暇小学校就学前(令和7年4月1日以降は小学校3年生修了前)までNG対象・入社6か月未満(令和7年4月1日以降は除外不可)
・1週2日以下
・時間単位の取得不可業務を定められる
日雇
①③④の申出を希望する労働者は、1カ月前までに1カ月間から1年(④深夜業は6カ月)以内の期間を指定して事前に事業主へ申出する必要あり
上記以外に、1歳未満の生児を養育する女性労働者は、1日2回30分ずつ休憩時間を請求できる(勤務時間が4時間以内の場合は1日1回)

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