第1子の育児休業を取得中の労働者が、そのまま続けて第2子の産前産後休業を取得する場合、第1子の育児休業給付金と第2子の出産手当金を併給できることがあります。
この記事では、どのような場合に上記の併給申請が可能となるのか?について解説していきます。
第1子の育児休業給付金と第2子の出産手当金は併給できる!
みなさんは、第1子の育児休業を取得中の社員の方が、そのまま続けて第2子の産前産後休業を取得する場合、第1子の育児休業給付金と第2子の出産手当金を併給できる場合があることをご存じでしょうか?
第2子の産前休業を開始した場合、第1子の育児休業期間は終了することとなっているため、このような話を耳にして「??」と思われた労務担当者の方が多いのではないかと思います。
実のところ、この併給を可能としている根拠は・・・
- 産前産後休業について規定している「労働基準法」
- 出産手当金の支給ルールについて規定している「健康保険法」
- 育児休業について規定している「育児介護休業法」
- 育児休業給付金の支給ルールについて規定している「雇用保険法」
の各法の考え方の違いに由来しています。
いったいどういうことなのでしょうか?
詳しく解説していきます。
第1子の育児休業期間と第2子の産前休業期間との関係
まず最初に、第1子の育児休業期間と第2子の産前休業期間との関係についてみていきましょう。
第1子の育児休業期間は「育児介護休業法」で、「労働基準法」に基づく産前産後休業が開始した場合に終了することが規定されています。
育児休業給付金は「雇用保険法」で、「育児介護休業法」に基づく育児休業期間を対象として支給することが規定されておりますので、「労働基準法」に基づく第2子の産前産後休業が開始された場合は、第1子の育児休業期間は第2子の産前産後休業開始日の前日までで支給終了となります。
それでは、第1子の育児休業給付金と第2子の出産手当金を併給できる場合とは、どのような場合なのでしょうか?
第2子の産前休業を取得しないことが出産手当金・育休給付金を併給するための条件
この表題を見て、益々「??」と思われた方が多いのではないかと思います。
その疑問点はおそらく・・・
- 第2子の産前休業は取得しなくてよいのか?
- 産前休業を取得しないのに、なぜ出産手当金を受給できるのか?
の2点になるかと思います。
第2子の産前休業は、第1子の育児休業期間が終了する前なら、あえて取得する必要はない
まず、「第2子の産前休業は取得しなくてよいのか?」の疑問点について解説していきましょう。
これについては「労働基準法」に定められた通りで・・・
- 出産予定日前42日間(*)の産前期間については、出産予定の妊婦労働者本人が「希望した場合にのみ」事業主は産前休業を与えなければならない
(*)多胎妊娠の場合は98日間
こととなっております。
よって・・・
☑
第2子を出産予定の労働者の方本人は、第1子の育児休業期間をわざわざ終了させてまで、あえて産前休業を取得する必要はありません。
また・・・
☑
事業主側については、産前休業を与えなければならないどころか、本人からの申出無しに、事業主の命令で産前休業を取得させてはなりません。
つまり・・・
第1子の育児休業期間が継続しているのであれば、最長で「出産日当日(*)」までは、産前休業を取得しなければ、育児休業給付金の支給対象となりうる
(*)出産日当日は産前休業期間に含まれます
ということです。
【産後休業は必ず取得しなければならない】
ちなみに、出産日の翌日から56日間(*)の産後休業期間については、労働基準法により、母体保護のため本人の申出有無にかかわらず就労禁止とされています。
(*)出産日の翌日から6週間(42日間)経過後は医師の承諾があれば就労可
このため、産後休業は必ず取得しなければならず、最長でも、育児休業期間は産後休業の開始日前日までには終了することとなります。
よって、第2子の出産日の翌日以降に、第1子の育児休業給付金を受給できる余地はありません。
労働基準法の産前休業期間と出産手当金の産前休業期間は別物
次に、「産前休業を取得しないのに、なぜ出産手当金を受給できるのか?」の疑問点について解説していきましょう。
この理由については、結論から申し上げますと・・・
出産手当金支給対象期間のうち、出産前42日間(*)については、必ずしも労働基準法の「産前休業」を取得している必要はなく、「出産のため労務に服していない期間」であれば支給対象となる
(*)多胎妊娠の場合は98日間
ことにあります。
上記の支給ルールは「健康保険法」で定められています。
ちなみに、ここでいう出産前42日間のカウントは・・・
✅出産日が「出産予定日」よりも前となった場合は「実際の出産日」
✅出産日が「出産予定日」よりも後になった場合は「出産予定日」
を基準としてカウントします。
第1子の育児休業期間が継続しており、実際の出産日まで労働基準法の「産前休業」を取得しなかった場合も、その出産前42日間については「出産のため労務に服していない期間」として認められますので、この期間に対しても出産手当金が支給されることとなります。
つまり、この場合の出産前42日間については、「雇用保険法」のルールに則り、「育児介護休業法」に基づく育児休業を取得したものとして、育児休業給付金の支給対象期間となる一方、「健康保険法」に基づき、出産手当金の支給対象期間にもなるということです。
なお、出産日が到来するまでに、第1子の育児休業期間が終了する場合は、その終了日の翌日から「労働基準法」に基づく「産前休業」を取得すれば、出産前42日間の途中において育児休業が終了するまでの間、出産手当金に加えて育児休業給付金の支給も受けられることとなります。
まとめ
以上の解説を受け、皆様はどのように思われたでしょうか?
第1子の育休に続けて、第2子の産休に入られる社員の方がいる場合は、上記のような仕組みがあることを理解していないと、社員の方に対し意図せず「損」をさせてしまうかもしれません。
各法の違いを背景にして、このような仕組みが生じているため何とも釈然としませんが、産休・育休手続きに携わる労務担当者の方は、単なるテクニック論として片づけるのではなく、いざという時のためにしっかりと理解しておく必要がありそうです。
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