【育児短時間勤務の利用中は残業禁止?】子育て労働者に対する残業免除措置とともに解説!

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この記事では、「育児短時間勤務」制度を利用中の労働者が時間外労働(残業)をする場合のルールについて解説しています。

<この記事はこんな方におすすめです>

✅育児中の社員がいる会社の経営者・労務担当者の方

✅育児中の社員の方

✅産休・育休予定の社員がいる会社の経営者・労務担当者の方

✅これから産休・育休の利用を考えている社員の方

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CLASSY. 2024年2月号(12/27発刊) 「“私”のアドバイザー」欄に掲載されました

はじめに

育児介護休業法では、事業主は、3歳未満の子を養育する労働者に対して短時間勤務制度(1日6時間)を設けなければならないとしています。

具体的には、3歳未満の子を養育する労働者からの請求に備え、あらかじめ所定労働時間を6時間とする勤務時間制度を就業規則等に定めておく必要があります。

ここで1つ疑問点が生じるかと思います。

この短時間勤務制度を子育て中の労働者が利用した場合、果たして6時間を超えて残業しても問題ないか?という疑問点です。

そこで、この記事では上記の疑問点について、3歳未満の子を養育する労働者に対する「残業免除」措置もふまえ、分かりやすく解説していきます。

育児中、あるいは産休・育休予定の社員がいる会社の経営者・労務担当者の方には、是非ともこの記事をご活用いただき、制度内容の理解を深めていただければと思います。

(ここでは、公務員の方は除いて解説していきますのでご了承下さい)

なお、この記事では、「育児短時間勤務制度」を利用中における「残業」にスポットをあてて解説しております。

3歳未満の子を養育する労働者に対する「育児短時間勤務制度」そのものの内容、または「残業免除」措置の内容につき詳しく知りたい方は、以下のブログをご参照下さい。↓

育児短時間勤務制度を利用中であっても残業は可能

ここからは「時間外・休日労働に関する協定届(36協定)」が締結されている前提で話を進めていきます。

事業主は、企業規模の大小を問わず、3歳未満の子を養育する労働者から請求があった場合に備えて「育児のための短時間勤務制度(1日6時間)」を所定のルールに則り、就業規則等に規定しておかなければならないことが育児介護休業法によって定められています。

上記の規定にしたがい申出があった労働者に対し、事業主は所定労働時間」の短縮措置をとらなければなりません。

ちなみに「所定労働時間」とは、事業主があらかじめ定める労働時間のことであり、「法定労働時間」とは、1日8時間、1週40時間(*)といった労働基準法で定められた割増賃金の支払いを必要としない労働時間のことを指します。

(*)常時10名未満の労働者を使用する特定の業種については1週44時間

ただし、「育児短時間勤務制度」には・・・

必ず「短縮した所定労働時間の範囲内」で労働させなくてはならないとまでは定めがありません。

制度の趣旨から考えると、短時間勤務制度を利用する労働者に対して残業を強要することはあってはなりませんが、あくまでも「育児短時間勤務制度」単体では、このようなかたちになっています。

なお、育児介護休業法では・・・

3歳未満の子を養育する労働者から申出がある場合には所定労働時間を超える残業」をさせてはならない

ことも定めています。

つまり、育児介護休業法の上では・・・

「育児短時間勤務制度」の利用期間に対して「残業免除」の申出を行った労働者には、

「短縮された所定労働時間」を超えて時間外労働(残業)をさせてはならない

ということになります。

育児短時間勤務と残業免除は別々にルールが定められている

ただ、ここで、少し気になる点が2つあります。

それは、「育児短時間勤務制度」と「残業免除」のルールが別々に定められていることに起因します。

まず1点目は、「残業免除」措置は、育児介護休業法によって・・・

申出は、制限開始の1カ月前までに「1カ月から1年以内の期間」を指定して事業主へ申出しなければならない

と定められている点です。

ちなみに上記の申出は、子が3歳になるまでならば、何回でも行うことができます。

一方、「育児短時間勤務制度」には、上記のような定めはなく、事業主が個別に申出ルールを就業規則等に定めることとなっています。

つまり、何が言いたいかというと・・・

3歳未満の子を養育する労働者が「育児短時間勤務制度」を利用中であっても・・・

あらかじめ1カ月前までに「1カ月から1年以内の期間」を指定して「残業免除」の申出をしていなければ、残業免除措置を受けられない

とも考えられるということです。

もちろん、制度の趣旨を鑑みるに、「育児短時間勤務制度」の利用者に対して、あらかじめ「残業免除」の申出が無かったからといって、残業を強要するのは筋違いかと思いますが、何ともスッキリしない感じがします。

なお、実務上は、厚生労働省のモデル就業規則(育児介護休業規程)にもあるように、「育児短時間勤務制度」についても事業主が個別に「あらかじめ1カ月前までに」申出するようルール化し、「残業免除」措置の申出と一体的に運用するのがよいかと思われます。


さて、次に2つ目の気になる点についてです。

それは、「残業免除」措置は、育児介護休業法によって・・・

事業の正常な運営を妨げる場合には、事業主は申出を拒否できる

と定められていることです。

「育児短時間勤務制度」には、このような規定はなく、「事業の正常な運営を妨げる」ことを理由に事業主は申出を拒否することはできません。

つまり、事業主は、3歳未満の子を養育する労働者に対して・・・

「事業の正常な運営」如何にかかわらず、「育児短時間勤務制度」による所定労働時間短縮の申出は必ず受けなければならないが・・・

「事業の正常な運営を妨げる場合」には、残業免除の申出は拒否できる

と考えられなくも無いということです。

ただし実務上、「事業の正常な運営を妨げる場合」の解釈は、乱用を防ぐためかなり厳しく定義されており、「育児短時間勤務制度」を利用し、かつ「残業免除」の申出もしている労働者に対して残業させなければならない事態は、めったに発生し得ないものと思われます。

なお、「事業の正常な運営を妨げる場合」の解釈は以下のように定義されています。

事業の正常な運営を妨げる場合とは


事業の正常な運営を妨げる場合に該当するか否かは・・・

その労働者の所属する事業所を基準として、

担当する作業の内容・作業の忙しさ・代行する者を配置する難しさ等を考慮して客観的に判断すべきもの

とされています。

事業主は、

その労働者が請求どおりに残業免除を受けることができるよう、通常考えられる相当の努力をすべき

とされており、単に所定外残業が事業運営を行う上で必要だという理由だけでは拒むことはできません。

この残業免除措置の対象は「小学校就学前の子」を養育する労働者まで拡大される見通し

ちなみに、上記の「所定時間外労働の制限(残業免除)措置」については「3歳未満の子」を養育する労働者から「小学校就学前の子」を養育する労働者へと適用対象となる労働者を拡大することが検討されており、令和7年4月までに法改正が行われる見通しがあります。

割増賃金(残業代)の取扱い


ちなみに割増賃金の支払いについては以下のとおりとなります。

法定内残業の場合


「育児短時間勤務制度」によって所定労働時間が6時間に短縮されていた場合、6時間を超えて残業した際の割増賃金については・・・

労働基準法に定める1日の労働時間上限である8時間までの範囲内ならば、

「法定内」残業として扱われ、法的には割増賃金を支払う義務はありません。

ただし、就業規則等に別途の定めがある場合はその定めに従うこととなりますし、当然ながら、6時間を超えて働いた時間分の通常の賃金は支払わなければなりません。

法定外残業の場合

一方、6時間を超えて残業した時間が・・・

労働基準法に定める1日の労働時間上限である8時間を超えた部分については、

「法定外」残業として扱われ、最低でも25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。

育児短時間勤務制度」・「残業免除措置」の各内容


それでは最後に、3歳未満の子を養育する労働者へ対する「育児短時間勤務制度」・「残業免除措置」の各内容について、簡単におさらいしておきましょう。

育児短時間勤務制度

事業主は、3歳未満の子を養育する労働者からの請求に備えて・・・

あらかじめ、所定労働時間を6時間とした短時間勤務制度を就業規則等に定めておかなければなりません。

この短時間勤務制度の利用は・・・

事業の正常な運営を妨げる」ことを理由に、請求を拒否することはできません。

ただし・・・

以下の労働者は労使協定の有無にかかわらず、この制度の対象から除外されています。

  • 日雇い労働者
  • もともと1日の所定労働時間が6時間以下の労働者
  • 労働基準法41条該当者*

【*労働基準法41条該当者】

  • 管理監督者であって、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者
  • 農水産業従事者(林業を除く)
  • 監視など断続的労働従事者で労働基準監督署の許可を受けた者

また、上記に加えて・・・

労使協定を締結することにより、この制度の対象外とする労働者を追加することができます。

<労使協定により対象外とすることができる労働者>

  • 入社1年未満の労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
  • 短時間勤務制度を適用することが困難と認められる業務(*)に従事する労働者

*具体的な業務の範囲についても協定する必要があります

残業免除措置


本人より請求があった場合・・・

3歳未満の子を養育するほぼ全ての労働者に対し、所定労働時間を超えて残業をさせてはいけません。

ただし・・・

事業の正常な運営を妨げる場合、事業主はこの請求を拒否することができます。

また・・・

労使協定を締結することにより、免除対象外とする者を定めることができます。

<労使協定により対象外とすることができる労働者>

  • 入社1年未満の労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者


なお、もともと、日雇労働者・労働基準法41条該当者には、このルールは適用されません。


ちなみに、上記各制度の適用を受けたことを理由として、解雇・雇止め・減給等、不利益な取扱いを行うことは育児・介護休業法で固く禁止されています。

育児・介護休業法には罰則こそ定められてはおりませんが、違反が明らかとなった場合には、厚生労働省(都道府県労働局)の是正勧告が行われることとなり、勧告に従わない場合は企業名が公表されることとなります。

企業名が公表されると、ハローワークでの求人が受理されなくなる等の大きなペナルティーにつながる可能性があります。

また、当局から求められた報告を行わない場合や、虚偽報告を行った場合は20万円以下の過料に処されます。

まとめ

今回は、 「育児短時間勤務」制度を利用中の労働者が時間外労働(残業)をする場合のルールについて解説してきました。

3歳未満の子を養育する労働者へ対する「残業免除」ルールと一体的に運用されて、はじめて残業が明確に免除となることがお分かりになったことかと思います。

手続きを進める際には、この記事の必要な箇所を再読し、ぜひ活用していただければと思います。

それでは最後に、子を養育する労働者に対する、他の就業制限ルールとの相違点を比較できるよう、一覧表を添付させていただきます。

制度ごとの違いを確認する際にお役立て下さい。

【子を養育する労働者に対する就業制限ルール一覧表】

養育する子の年齢事業の正常な運営を妨げる場合却下41条労働者労使協定除外もともと除外
①残業禁止★
所定労働時間超
3歳までOK対象外・入社1年未満
・1週2日以下
・日雇
②時短勤務 3歳まで NG対象外・入社1年未満
・1週2日以下
・時短不可業務
(代替措置が必要)
・日雇
・1日6時間以下
③残業制限★
法定労働時間超
年150H・月24Hまで
小学校入学までOK対象外なし・日雇
・入社1年未満
・1週2日以下
④深夜業制限★小学校入学までOK対象なし・日雇
・入社1年未満
・1週2日以下
・深夜労働者
・同居人が養育可能
⑤子の看護休暇小学校入学までNG対象・入社6か月未満
・1週2日以下
・時間単位の取得不可業務を定められる
日雇
①③④の申出を希望する労働者は、1カ月前までに1カ月間から1年(③深夜業は6カ月)以内の期間を指定して事前に事業主へ申出する必要あり
上記以外に、1歳未満の生児を養育する女性労働者は、1日2回30分ずつ休憩時間を請求できる(勤務時間が4時間以内の場合は1日1回)

子育て中の労働者に対する、他の労働制限ルールについて知りたい方はこちらの記事をご参照下さい。↓

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  1. 産休・育休申出者への相談対応に必要となる最新の制度情報収集
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  5. 社会保険料引き落しの停止や地方税徴収方法変更等、給与支払事務の変更手続
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(*)全国健康保険協会への申請書類は書面作成のみサポート致します。

CLASSY. 2024年2月号(12/27発刊) 「“私”のアドバイザー」欄に掲載されました