【育児期間中の残業時間数制限】小学校就学前の子を養育する労働者へ対する残業時間数の制限について解説

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この記事では、小学校就学前の子を養育する労働者に対する法定時間外労働(上限時間数)のルールについて6つのポイントをふまえ解説しています。

<この記事はこんな方におすすめです>

✅育児中の社員がいる会社の経営者・労務担当者の方

✅育児中の社員の方

✅産休・育休予定の社員がいる会社の経営者・労務担当者の方

✅これから産休・育休の利用を考えている社員の方

はじめに

育児介護休業法では、小学校就学前の子を養育する労働者が請求した場合、事業主は労使協定の有無に関わらず、1カ月につき24時間、1年につき150時間を超える時間外労働をさせてはならないと定めています。

このルールは、産休・育休から職場復帰した労働者だけでなく、小学校就学前の子を養育するほぼ全ての労働者に対して適用され、事業主は企業規模の大小にかかわらず対応しなければなりません。

そこで、この記事では上記のルールについて6つのポイントをふまえ分かりやすく解説していきます。

育児中、あるいは産休・育休予定の社員がいる会社の経営者・労務担当者の方には、是非ともこの記事をご活用いただき、社内の体制を整えていただければと思います。

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育児中の残業時間数制限ルール

それではまず、小学校就学前の子を養育する労働者に対する残業時間数の制限がどのように規定されているかについて見ていきましょう。

【残業時間数制限ルールの内容】

小学校就学前の子を養育する労働者から請求があった場合・・・

事業主は、法定労働時間に対して、1カ月につき24時間、1年につき150時間を超える時間外労働(残業)をさせてはなりません。

ただし・・・

事業の正常な運営を妨げる場合、事業主はこの請求を拒否することができます。


なお、あらかじめ以下の労働者については、本制限措置の対象から除外されています。

  • 日雇い労働者
  • 入社1年未満の労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
  • 労働基準法41条該当者(*)

(*)
労働基準法41条該当者とは、「管理監督者であって、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」「農水産業従事者(林業を除く)「監視など断続的労働従事者で労働基準監督署の許可を受けた者」を指します。


この制度の適用を受けたことを理由として、解雇・雇止め・減給等、不利益な取扱いを行うことは育児・介護休業法で固く禁止されています。

育児・介護休業法には罰則こそ定められてはおりませんが、違反が明らかとなった場合には、厚生労働省(都道府県労働局)の是正勧告が行われることとなり、勧告に従わない場合は企業名が公表されることとなります。

企業名が公表されると、ハローワークでの求人が受理されなくなる等の大きなペナルティーにつながる可能性があります。

また、当局から求められた報告を行わない場合や、虚偽報告を行った場合は20万円以下の過料に処されます。

残業時間数制限ルール6つのポイント

それでは次に、このルールのポイントについて見ていきましょう。

このルールのポイントは・・・

  1. 小学校就学前の子を養育するほぼ全ての労働者が申出できること
  2. 上限が設定されている残業時間は、法定労働時間を超えるものであること
  3. 本人から申出があった場合にのみ制限が適用されること
  4. 申出する場合は、制限開始の1カ月前までに「1カ月から1年以内の期間」を指定して事業主へ申出しなければならないこと
  5. 事業の正常な運営を妨げる場合、事業主は申出を拒否できること
  6. 労使協定で本制限の対象外とする者を定めることはできないこと

の6つに分かれます。

それでは1つずつ見ていきましょう。

小学校就学前の子を養育するほぼ全ての労働者が申出できる


まず、1つ目のポイント・・・

小学校就学前の子を養育するほぼ全ての労働者が申出できること

についてです。

このルールは、産休・育休取得の有無や、女性労働者か?男性労働者か?は問わず、「小学校就学前の子を養育するほぼ全ての労働者」を対象としている点に注意が必要です。

なお、

「ほぼ」全ての労働者を対象・・・

「ほぼ」については、前章でも解説したとおり、あらかじめ以下の労働者が本制限の対象から除外されていることを表しています。

【あらかじめ本制限の対象から除外されている労働者】

  • 日雇い労働者
  • 入社1年未満の労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
  • 労働基準法41条該当者(*)

(*)
労働基準法41条該当者とは、「管理監督者であって、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」「農水産業従事者(林業を除く)「監視など断続的労働従事者で労働基準監督署の許可を受けた者」を指します。

ちなみに、この残業制限ルールとよく似たものとして、「残業そのものを免除とするルール」がありますが、こちらの対象となるのは「3歳未満(令和7年4月1日以降は小学校就学前)の子を養育する労働者」となりますので混同しないよう注意して下さい。

②制限対象となるのは「法定労働時間」を超える残業時間数


次に、2つ目のポイント・・・

制限対象となる残業は、法定労働時間を超えるものであること

についてです。

ここでいう法定労働時間とは・・・

1日8時間、1週40時間といった、労働基準法で定められた割増賃金の支払いを必要としない労働時間の上限

を指します。

各事業所毎に、就業規則等で事前に決められている所定労働時間ではありませんので注意して下さい。

ちなみに、前章で出てきました3歳未満(令和7年4月1日以降は小学校就学前)の子を養育する労働者に対する残業免除措置」における「残業」は、各事業所毎に定めている所定労働時間」を超える時間外労働のことを指しますので違いに注意しておきましょう。

③申出があった場合のみ残業時間数に上限が設けられる


続いて、3つ目のポイント・・・

本人から申出があった場合のみ法定残業時間数に上限が設けられること

についてです。

この残業時間数制限ルールは、小学校就学前の子を養育する労働者本人から申出があった場合のみ事業主が適用しなければならないルールとなっています。

なお、労働者本人が、この申出を行う場合には、次項で説明する4つ目のポイントに従う必要があることが育児介護休業法に定められています。

あわせて社内周知しておきましょう。

ちなみに、この申出がなかった場合には、1カ月につき24時間、1年につき150時間を超えて法定労働時間を上回る残業を行わせても問題ありません。

④1カ月前までに「1カ月~1年以内の期間」を指定して申出が必要


それでは4つ目のポイント・・・

申出は、制限開始の1カ月前までに「1カ月から1年以内の期間」を指定して事業主へ申出しなければならないこと

についてです。

この残業時間数の制限については、対象労働者が就労日毎に申出できるものではなく、あらかじめ前もって「期間を定めて」申出しておかなければならないルールになっています。

なお、この申出自体は何回でも行うことができます。

これは、あくまでも育児介護休業法上のルールですので、就業規則等に、より柔軟な運用規定を設けることも可能ですが、法令どおり運用するのであれば、こちらの申出ルールに則って、事前にしっかり社内周知しておくべきでしょう。

事業の正常な運営を妨げる場合は申出を拒否できる


続きまして5つ目のポイント・・・

事業の正常な運営を妨げる場合には、事業主は申出を拒否できること

についてです。

事業主は、この場合、対象労働者からの申出を拒否することができるわけですが、この「事業の正常な運営を妨げる場合」とは?いったいどのようなケースを指すのでしょうか?

育児介護休業法では、以下のとおり定義していますので、必ず確認しておきましょう。

事業の正常な運営を妨げる場合とは


事業の正常な運営を妨げる場合に該当するか否かは・・・

その労働者の所属する事業場を基準として、

担当する作業の内容・作業の忙しさ・代行する者を配置する難しさ等を考慮して客観的に判断すべきもの

とされています。

事業主は、

その労働者が請求どおりに残業時間数の制限を受けることができるよう、通常考えられる相当の努力をすべき

とされており、単に事業運営を行う上で、1週24時間・1年150時間を超える法定時間外労働が必要だという理由だけでは拒むことはできませんので注意が必要です。

労使協定により制限対象外とする者を定めることはできない


それでは最後に6つ目のポイント・・・

労使協定により制限対象外とする者を定めることができないこと

についてです。

この記事の冒頭でも解説したとおり、小学校就学前の子を養育する労働者に対する「法定外残業時間数の上限適用ルール」では、あらかじめ適用対象とならない者が明確となっており、任意で適用外とする者を労使協定で追加することはできません。


なお、あらかじめ本制限措置の対象から除外されている者は以下のとおりです。

今一度おさらいしておきましょう。

  • 日雇い労働者
  • 入社1年未満の労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
  • 労働基準法41条該当者(*)

(*)
労働基準法41条該当者とは、「管理監督者であって、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」「農水産業従事者(林業を除く)「監視など断続的労働従事者で労働基準監督署の許可を受けた者」を指します。

まとめ

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今回は、小学校就学前の子を養育する労働者に対する法定外残業時間数の上限ルールについて6つのポイントをふまえて解説してきました。

単純に「小学校就学前の子がいれば残業時間数に上限が設定される」ということではなく、あらかじめ期間を指定して申出しなければ制限を受けられないこと等、6つのポイントをしっかりマスターしておきましょう。

手続きを進める際には、この記事の必要な箇所を再読し、ぜひ活用していただければと思います。

それでは最後に、子を養育する労働者に対する、他の就業制限ルールとの相違点を比較できるよう、一覧表を添付させていただきます。

制度ごとの違いを確認する際にお役立て下さい。

【子を養育する労働者に対する就業制限ルール一覧表】

養育する子の年齢事業の正常な運営を妨げる場合却下41条労働者労使協定除外もともと除外
①残業禁止★
所定労働時間超
3歳まで(令和7年4月1日以降は小学校就学前まで)OK対象外・入社1年未満
・1週2日以下
・日雇
②育児短時間勤務 3歳まで NG対象外・入社1年未満
・1週2日以下
・時短不可業務
(代替措置が必要)
・日雇
・1日6時間以下
③残業制限★
法定労働時間超
年150H・月24Hまで
小学校就学前までOK対象外なし・日雇
・入社1年未満
・1週2日以下
④深夜業制限★小学校就学前までOK対象なし・日雇
・入社1年未満
・1週2日以下
・深夜労働者
・同居人が養育可能
⑤子の看護(等)休暇小学校就学前(令和7年4月1日以降は小学校3年生修了前)までNG対象・入社6か月未満(令和7年4月1日以降は除外不可)
・1週2日以下
・時間単位の取得不可業務を定められる
日雇
①③④の申出を希望する労働者は、1カ月前までに1カ月間から1年(④深夜業は6カ月)以内の期間を指定して事前に事業主へ申出する必要あり
上記以外に、1歳未満の生児を養育する女性労働者は、1日2回30分ずつ休憩時間を請求できる(勤務時間が4時間以内の場合は1日1回)

子育て中の労働者に対する、他の就業制限ルールについても知りたい方は以下の記事をご参照下さい。

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