【出生時育児休業給付金とは】支給要件・計算方法・育児休業給付金との違いなどを解説!

この記事をシェア!

この記事では、「出生時育児休業(産後パパ育休)」期間に対して支給される、「出生時育児休業給付金」制度について解説しています。

はじめに

令和4年10月1日より、夫婦共同での子育て支援を推進すべく、育児介護休業法の制度として「出生時育児休業(産後パパ育休)」が制度化されました。

上記の休業制度開始にあわせて、雇用保険法も同時に改定され、従来からある「育児休業給付金」制度に加え、「出生時育児休業給付金」制度がスタートしています。

この記事では、この「出生時育児休業給付金」制度について詳しく解説していきます。

(ここでは、船員保険に加入する方、および共済組合等に加入する公務員の方は除いて解説していきますので、あらかじめご了承下さい)

なお、通常の育児休業給付金との比較について知りたい方は、以下の記事もご参照下さい。

「出生時育児休業」期間中は「出生時育児休業給付金」が支給される

「出生時育児休業(産後パパ育休)」期間中については「出生時育児休業給付金」が支給されます。

この「出生時育児休業給付金」と、従来からある通常の「育児休業給付金」の制度内容は、異なるルールにもとづき運用されている点がありますので注意が必要です。

支給要件


まず、支給要件についてですが、「出生時育児休業給付金」を受給するためには・・・

雇用保険へ加入しており、休業開始日の前日から「1カ月ずつ24回(2年間)さかのぼった各期間」の中に、「賃金支払いの基礎となった日数が11日以上、又は80時間以上ある月(=完全月)」が12か月以上なければなりません。

なお、上記2年間の判定期間中に、「疾病・負傷等やむを得ない理由」により引き続き30日以上「賃金の支払いを受けることができなかった期間」がある場合は、その期間を2年間に加算し、最大合計4年間までの範囲内で判定することができます。

この支給要件は、通常の「育児休業給付金」の場合と同様です。

支給対象外となる労働者

次に、「出生時育児休業給付金」の支給対象となる労働者についてみていきましょう。

まず、

休業開始時点で退職予定の労働者

については、雇用保険に加入していたとしても支給対象となりません。

続いて、以下の労働者については、雇用保険の加入対象外であるか、未加入となるため支給対象となりません。

週所定労働時間が20時間未満の労働者

通信・夜間・定時制を除く学生の労働者(*)

*)
卒業見込み証明があり、正式入社を前提に、一般労働者と同様に勤務している学生は雇用保険に加入できます。(加入している場合は支給対象となります)

農林水産業を行う常時雇用者5名未満の小規模個人事業者の元で働き、雇用保険に加入していない労働者(*)

*)
上記個人事業者は雇用保険への加入が任意となっています。

最後に本題からは外れますが、育児介護休業法において「出生時育児休業」の取得対象外となっている労働者についても念のため触れておきます。

「出生時育児休業給付金」は、育児介護休業法に基づき「出生時育児休業」を取得できる労働者に対して支給することが前提となっていますので、そもそも同法によって、休業対象外とされている以下の労働者には支給されません。

育児介護休業法で認める理由以外で育児の為の休業を取得した労働者

日雇い労働者(*)

*)
「日雇労働被保険者」として雇用保険に加入できる場合がありますが、育児介護休業法では(出生時)育児休業の対象者から除外されています。

期間を定めて雇用されており、「子の出生日(*)から8週間を経過する日」の翌日から「6か月を経過する日」までに、契約終了することが明らかな労働者

(*)出産予定日前に子が出生した場合は、出産予定日から起算します。

労使協定で「出生時育児休業」の対象外としている労働者

なお、労使協定を締結した場合は、以下の労働者を対象外とすることができます。

  • 勤続1年未満の労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
  • 申出日から8週間以内に雇用契約が終了することが明らかな労働者

会社役員は給付金を受給できない

少し横道にそれますが、会社役員の場合「出生時育児休業給付金」は受給できるのでしょうか?

答えは×で、受給できません。

会社役員には雇用保険が適用されず、日頃から雇用保険料も支払っていません。

また、育児介護休業法も適用対象外となっており、そもそも「出生時育児休業」の制度自体、利用することができません。

よって、仮に育児のために休業したとしても給付金を受給することはできません。

ただし、例外として雇用保険に加入している使用人兼務役員については、一般の労働者と同様、育児介護休業法が適用され「出生時育児休業給付金」についても受給することができます。

【両立支援等助成金活用のご案内】

従業員の育休取得を推進する中小企業に対しては、非常に手厚い助成金制度が設けられています!

育休関連の助成金制度について知りたい方は、以下のサイトもご参照下さい。
欠員補充コストでお悩みの事業主様には、是非とも知っておいていただきたい内容となっています。

申請のタイミング

それでは続いて、申請のタイミングについてみていきましょう。

「出生時育児休業」は子の出生後8週間以内に2回に分割して取得することができますが・・・

「分割して休業する場合の申出」・「給付金の申請」ともに、1回にまとめて行わなければなりません。

対して、通常の「育児休業」を分割して取得する場合は、「休業の申出」・「給付金の申請」ともに、それぞれの休業期間に対し個別に行うこととなります。

申請のタイミングは・・・

出生時育児休業」の取得可能期間である、出生後8週間(*)の経過を待ってから

行うこととなっています。

(*)予定日前に出生した場合は、 当初出産予定日から8週間経過後となります。

また、上記に加え、意外と盲点になりがちなルールですが・・・

休業期間を対象として給与が支払われる場合は(その額についても申請が必要となるため)、当該給与支払日を待ってから

申請しなければならない決まりもありますので注意して下さい。

申請期限


申請期限は・・・

子の出生日の8週間後」の翌日から起算して「2か月後の月末」まで

となっています。

なお、上記「8週間後」の起算日は・・・

  • 「出産予定日」前に子が出生した場合は「出産予定日」の翌日
  • 「出産予定日」後に子が出生した場合は「実際の出生日」の翌日

となります。

ちなみに、通常の「育児休業給付金」支給申請期限は、「支給単位期間(*)」の初日から起算して「4カ月を経過する日の属する月の末日」までとなります。

(*)支給単位期間: 「育休開始日~その翌月応答日前日」までを初回支給単位期間とし、以後1カ月毎に区切った各期間

支給額

「出生時育児休業給付金」の支給額については・・・

休業開始時賃金日額(「休業開始前6か月間の賃金総額」 ÷ 180日) × 休業期間の日数(* )× 67%

となります。

(*)休業期間の日数は、28日(4週間)が上限となります。

(注)

上記の「休業開始前6か月間の賃金総額」とは、休業開始日直前にある「賃金締切り期間」のうち・・・

「賃金支払い基礎日数が11日以上」もしくは「賃金支払い基礎となった時間数が80時間以上」を満たす期間(=完全賃金月)

のみを集計した、直近6カ月分の賃金総額を指します。

なお、上記の

休業開始時賃金日額(休業開始前6か月間の賃金総額÷180日)の上限額は、15,690円(令和6年8月1日~)

となっています。

よって、「出生時育児休業給付金」の1日あたり上限額は・・・

休業開始時賃金日額の上限額:15,690円 ×67% = 10,512円(上限額)

となります。

なお、出生時育児休業を最長28日間取得した場合の支給額は、

  • 上限額:15,690円×67%×28日=294,344円

となります。

支給日数は、支給率67%の上限日数である180日間に通算される

「出生時育児休業給付金」を支給した日数は、後に通常の「育児休業」を再取得するにあたって「育児休業給付金」を支給申請した場合、支給率67%の上限日数である180日間に通算されることとなります。

180日計算の起算日はリセットされませんのでご注意下さい。

それでは引き続き、支給調整(不支給もしくは減額支給となる基準)について見ていきましょう。

当事務所では、「産休・育休手続ナビゲーション+申請手続代行サービス」を行っております。

メールのみで・・・

  1. お申込み(別途 書面の郵送が必要となります)
  2. 最新の産休・育休制度内容把握
  3. 産休・育休の各種事務手続(代行)

まで、一筆書きで完了させることができるサービス内容となっております。

あわせて・・・

  1. 育休関連助成金の申請サポートも行っております。(助成金のみサポートも可能です)

◆育休推進企業に向けては、育休関連経費を大幅に上回る助成金制度が準備されています。

完全オンライン対応で、就業規則等改定~助成金申請代行まで個別にサポート致します。

  1. 産休・育休取得実績が乏しい中小零細企業のオーナー様
  2. ご多忙につき、「情報収集の時間確保」が難しいご担当者
  3. 業務中断せず、自分のペースでメール支援を受けたい

から大変ご好評いただいております。

全国47都道府県対応

メールのみで 学びながらアウトソーシング!

当サービスをご利用いただくと、以下①~⑥の全てを、一筆書きで完了させることができます。

  1. 産休・育休申出者への相談対応に必要となる最新の制度情報収集
  2. 休業申出書・育休取扱通知書等、各種必要書面の準備
  3. 切迫早産・切迫流産等発生時の傷病手当金(*)、帝王切開時の高額療養費限度額適用認定(*)申請
  4. 出産手当金(*)・育休給付金・社会保険料免除等、産休・育休に必要な全ての申請(手続代行)
  5. 社会保険料引き落しの停止や地方税徴収方法変更等、給与支払事務の変更手続
  6. 職場復帰後の「休業終了時 社会保険料特例改定」(手続き代行)
  7. 「厚生年金保険料 養育期間特例適用」申請(申請書作成のみサポート)

(*)電子申請できない書類は書面作成のみサポート致します。

CLASSY. 2024年2月号(12/27発行) 「“私”のアドバイザー」欄に掲載されました

従業員数が多い企業様に対しては、産休・育休のみに特化したアドバイザー業務の提供も行っております。

アドバイザー業務の内容は、主に・・・

  1. 産休・育休関連手続きに関する常時相談対応(メール対応)
  2. 特殊なケースを含めた各種手続きサポート+申請手続き代行
  3. 次世代法及び女性法(*)による一般事業主行動計画の策定支援
  4. 次世代法及び女性法(*)による年度毎の情報公表等支援
  5. 育休関連の助成金(および奨励金)等選定+申請サポート

(*)次世代育成支援対策推進法・女性活躍推進法

等となります。

年間休業取得者数の見通し等に基づき、完全カスタマイズで契約形態・利用料金等をご相談いただけます。(サポートはオンライン対応のみとなります)

全国47都道府県対応

支給調整

さて、ここからは、「出生時育児休業」期間中に就業した場合、もしくは給与が支払われた場合の支給調整ルールについて解説していきます。

「出生時育児休業給付金」の支給対象となる休業期間中に、一定以上就労した場合、もしくは給与が支払われた場合・・・

給付金が不支給もしくは減額支給される

かたちで支給調整が行われます。

給付金の全額が支払われない場合

最初に、「出生時育児休業給付金」が不支給となる場合について見ていきましょう。

まず1つ目は・・・

「休業開始時賃金日額 × 休業期間の日数(*)」 の80%以上の「給与」が支払われた場合、給付金の全額が支払われない

ルールについてです

「出生時育児休業給付金」の支給額ではなく「休業開始時賃金日額 × 休業期間の日数(*)」の80%以上「給与」が支払われた場合

ですので勘違いしないよう注意して下さい。

*)ちなみに、上記の「休業開始時賃金日額」とは・・・

休業開始前6か月間の賃金総額÷180日を指します。

上記金額に67%を乗じた金額が、「出生時育児休業給付金」の支給日額となりますので・・・

休業開始時賃金日額とは「掛け目を乗じる前の休業開始前6か月賃金平均額(日額)」

に相当します。

上記の「休業開始前6か月間の賃金総額」とは、休業開始日直前にある「賃金締切り期間」のうち・・・

「賃金支払い基礎日数が11日以上」もしくは「賃金支払い基礎となった時間数が80時間以上」を満たす期間(=完全賃金月)

のみを集計した、直近6カ月分の賃金総額を指します。

また、「休業期間の日数」とは・・・

一時就業した日数も含めた「全ての休業期間の日数」

を指します。

ちなみに・・・

「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」の80%以上の「給与」が支払われた場合、給付金の全額が支払われない

とされていますが、ここでいう「給与」が支払われた場合とは・・・

「出生時育児休業期間中」に対してのみ支払われた「給与」を指します。

この支給調整の対象となる「給与」の定義についてですが・・・

少しややこしく分かりにくい部分がありますので、後ほど詳しく解説します。


なお、ここまで解説した1つ目の「出生時育児休業給付金」不支給ルールは、通常の「育児休業給付金」の場合と、ほぼ同じ内容になっています。

ちなみに両者の相違点は、不支給の基準となる「給与」の額を算定するにあたり、80%を乗ずるのが・・・

  • 通常の「育児休業給付金」の場合は「休業開始時賃金月額(*)」
  • 「出生時育児休業給付金」の場合は「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」

である点となります。

(*)「休業開始時賃金月額」とは、「休業開始前6か月間の賃金総額÷180日×30日」を指します。

さて、次に2つ目のルールについてですが、こちらは少し詳しく解説する必要があります。

10日間、かつ80時間を超えて就労した場合 、給付金の全額が支払われない

ルールについてです。

「出生時育児休業」は、最長で4週間(28日間)取得することができますが、休業した日数がピッタリ28日であれば、このルールをそのまま適用します。

ちなみに、上記のルールは、通常の「育児休業給付金」に適用されている不支給ルールと同じです。

さて、それでは、休業日数の合計が28日(4週間)未満となる場合はどうなるでしょうか?

この場合は・・・

「休業期間の日数」に比例して支給調整が行われる

こととなり・・・

10日×「休業期間の日数÷28日」(端数切り上げ)

かつ

80時間×「休業期間の日数÷28日」(端数処理なし)

を超えて就業した場合が不支給となります。

上記の「休業期間の日数÷28日」を、「4週間(28日)」に対する「休業期間の日数」の比率と言い換えると分かりやすいと思います。

つまり、「休業期間の日数」の合計が28日よりも少ない場合は、その比率に応じて不支給の基準となる日数・時間数を少なくするということです。

例えば、「出生時育児休業」の「休業期間の日数」が12日であれば・・・

12日÷28日で算出した「比率」10日に乗じた5日(端数切り上げ)

かつ、

上記の「比率」80時間に乗じた34.28時間(端数処理なし)

を超えた場合に不支給となります。

なお、上記の「比率」は、

2回に分割して「出生時育児休業」を取得した場合、「休業期間の日数」と「就業日数」をそれぞれ合算し判定を行います。

分かりにくいですので、例を用いて説明しますと・・・

  • 休業1回目において「休業期間の日数8日間」のうち「5日就業」
  • 休業2回目において「休業期間の日数15日間」のうち「4日就業」

であった場合、休業1回目のみで判定すると、「就業日数5日」が、10日×「休業期間の日数8日÷28日で算出した比率」=3日(端数切上げ)を上回ってしまいます。

しかしながら、2回に分割して休業した場合は、1回目・2回目両方を合算して判定することができます。

よって・・・

「就業日数の合計9日(5日+4日)」は、10日×「休業期間の日数(8+15=23日)÷28日」=9日(端数切り上げ)の範囲内

となり、1回目・2回目の休業期間ともに給付金の支給対象に含めることができることになります。

育児介護休業法の就労ルールをクリアしていても給付金が出ない場合がごく稀にある!

さて、ここで1点、注意しておいていただきたいことを解説します。

それは・・・

出生時育児休業期間中の就業日数や時間数」を育児介護休業法のルールに従い設定した場合であっても、「出生時育児休業給付金制度」では支給調整事項に抵触してしまい、支給対象外となる場合が、ごく稀にある

点です。

このことは、

  • 「出生時育児休業(産後パパ育休)制度」は育児介護休業法
  • 「出生時育児休業給付金」は雇用保険法

と、両制度が別々の法律によって定められていることから、微妙な相違点が生じて出来てしまった落とし穴であるといえます。

それでは、どのような場合に注意しなければならないのか?詳しく見ていきましょう。

例えば、出生時育児休業の「休業期間の日数」が8日であるとします・・・

この場合、「出生時育児休業給付金」については、

8日÷28日で算定した「比率」を10日に乗じた3日(端数切り上げ)

かつ

上記の「比率」を80時間に乗じた22.85時間(端数処理なし)

を超えた場合に不支給となります。

対して、出生時育児休業の休業期間の日数が8日(内、全ての日が所定労働日)である場合、労使協定締結により就業可能となる上限日数は8日の半分である4日までとなります。

この場合、労使協定締結により就業可能となる日数は4日ですが、3日を超えて就業し、且つ総労働時間の合計が22.85時間を超えているため、出生時育児休業給付金は不支給になってしまいます。

1週1日の法定休日ルールがある関係上、上記のように出生時育児休業期間の全日数が所定労働日となることは稀ですが、サービス業など、会社カレンダーに基づき休日設定を行っている場合、このようなケースも発生する可能性が無いとは言い切れませんので注意が必要です。

出生時育児休業期間中の就業日数を決める際には、念のため「出生時育児休業給付金」の支給調整に抵触しないか?を確認したうえで決定するようにしたほうがよいでしょう。

出生時育児休業給付金が減額支給される場合

それでは最後に、出生時育児休業給付金が減額支給される場合について見ていきましょう。

「休業開始時賃金日額×休業期間の日数(*)」の80%未満の「給与」が支払われた場合については・・・

「休業開始時賃金日額×休業期間の日数(*)」の80%相当額から「支払われた給与額」を差し引いた金額が「出生時育児休業給付金」として支給されます。

(*)
ここでいう「休業期間の日数」とは、一時就業した日数も含めた「全ての休業期間の日数」を指します。

「出生時育児休業給付金」の支給額から「給与額」を差し引くわけではありません

ので勘違いしないよう注意して下さい。

ただし・・・

支払われた給与額が「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」の13%以下であれば、「出生時育児休業給付金」は減額されません。

もう少しわかりやすく解説しますと・・・

出生時育児休業給付金は、「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」に67%を乗じた金額が支給されます。

一方で、「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」の80%の金額から「給与額」を差し引いた金額が「出生時育児休業給付金」の支給額となります。

仮に、支払われた「給与額」が「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」の13%であった場合、「出生時育児休業給付金」の支給額は、「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」の80%から13%を控除した67%の金額となります。

つまり、支払われた給与額が「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」の13%以下までであれば、上記のルールに従って減額を行っても、「出生時育児休業給付金」の支給額には影響を与えないということです。

支給調整の対象となる「給与」の定義について

ここまで「出生時育児休業給付金」の支給調整について解説してきました。

もう一度おさらいしますと、この支給調整は、

給付金の支給対象となる休業期間中に「一定以上就労した」場合、もしくは「給与が支払われた」場合・・・

給付金が不支給もしくは減額支給される仕組み

となっています。

それでは、ここからは、上記支給調整ルールの中の給与が支払われた場合」における「給与」の定義について詳しく解説していきます。

なお、この定義については、「通常の育児休業給付金」の場合と「出生時育児休業給付金」の場合で、それぞれ内容が異なっています。

両者を比較しながら解説したほうが分かりやすいと思いますので、少し回り道となりますが、あえて、通常の「育児休業給付金」の場合から見ていきます。

【通常の育児休業給付金を支給調整する場合】

通常の「育児休業給付金」を支給調整する場合は・・・

「育休開始日」~「その翌月応当日前日」までを初回期間とし、以後1カ月毎に区切った各「支給単位期間」において、一定額以上の「給与」が支払われた場合に給付金を不支給もしくは減額支給することとなります。

そこで、ここからがポイントとなりますが・・・

ここでいう「給与」とは

原則、「支給単位期間中」に、支払日が到来したもの

であり、かつ・・・

「育休期間」のみを計算対象として支払われた「給与・手当等の賃金総額(*)」

のことを指します。

(*)時間外手当・精皆勤手当・通勤手当等も含めた全ての賃金総額

つまり・・・

「育休期間」以外を計算対象とした賃金を一部分でも含んでいる「給与」については、原則的にはその全額を支給調整の対象から外します。

ただし、上記「給与」の中から、育児休業した日のみに対して支払われた金額を明確に区別できる場合は、原則的なルールにあてはめず支給調整の対象となる場合がありますので注意が必要です。(実際の支給調整は申請先当局が決定します)

例えば、

  • 休業開始日が4月15日
  • 賃金締切日が月末日
  • 賃金支払日が翌月10日

であれば・・・

最初の育休給付金の「支給単位期間」は4月15日~5月14日となり、「給与支払日」は5月10日に到来します。

5月10日に支給される「給与」は、4月1日~4月30日を計算対象としており、「育休期間」以外である4月1日~4月14日を計算対象とした賃金を含んでいます。

このため・・・

5月10日に支給される「給与」は、4月15日~4月30日の「育休期間」を計算対象とした賃金も含め、原則的にはその全てが支給調整の対象から外されることとなります。

ただし、4月15日~4月30日の「育休期間」に対してのみ支払われた給与額を明確に区別して算定できる場合には、当該金額について支給調整の対象となる場合があります。

【出生時育児休業給付金を支給調整する場合】

それでは本題の「出生時育児休業給付金」を支給調整する場合について見ていきましょう。

こちらは少し複雑です・・・

まず、「通常の育休給付金」の場合は、

「休業期間」以外を計算対象とした賃金を一部分でも含んでいる場合は、原則的には、その「給与」の全額を支給調整の対象から外

決まりがありますが、「出生時育児休業給付金」の場合は、このルールが適用されません。

また、「通常の育休給付金」の場合、支給調整の対象となるのは・・・

原則、「支給単位期間中(*)」に、支払日が到来したもの

(*)支給単位期間: 「育休開始日~その翌月応答日前日」までを初回支給単位期間とし、以後1カ月毎に区切った各期間

となっていますが・・・

「出生時育児休業給付金」の場合は「支給単位期間」の概念がなく、

「休業期間」を対象として支払われた賃金であれば、「休業期間」終了後に支払日が到来したものについても支給調整の対象

となります。

よって、「休業期間」終了後に、上記の「給与」が支払われたことを確認してから支給申請しなければなりません。

それでは、続いて、支給調整の対象となる「給与」の額をどのように決定するか?について見ていきましょう。

まず、

「休業期間」を対象とする賃金を含む 「給与」については、その全額を、いったん支給調整の対象と捉えます。

そして・・・

この中から、「休業期間」のみを計算対象とした賃金部分を抽出し、その金額のみを支給調整の対象とします。


なお、ここでいう「休業期間」のみを計算対象とした賃金とは・・・

「出生時育児休業の開始日~終了日のいずれかの日」に対して支払われたものであり、就労の有無に関わらず、会社独自の取り決めにより支払われた賃金

と、

「出生時育児休業の開始日~終了日のいずれかの日 に対して支払われたものであり、 就労した日数・時間数に応じて支払われた賃金

両方を合計した賃金となります。

ただし、「家族手当」「資格手当」等、就業実績に関わりなく毎月「固定額」として支払われる賃金が、上記と同時に支給されている場合は注意しなければなりません。

これら「固定額」として支払われる賃金が・・・

「出生時育児休業の開始日~終了日」以外の期間も支給対象日に含んでいる場合については、その「固定額」の全てについて、支給調整の対象から外すこととなります。

あと、もうひとつ注意しておかなければならないのは、「通勤手当」の取扱いについてです。

「通勤手当」については・・・

「出生時育児休業」期間中の就労有無に関わらず、毎月「固定額」として支給されている場合は、上記の「家族手当」「資格手当」等と同様に取扱います。

いっぽう、「出生時育児休業」期間中に就労した日のみに対して「日額支給」されたものについては、 就労した日数・時間数に応じて支払われた賃金として支給調整の対象に含めなければなりません。

以上、ご理解いただけましたでしょうか?

少し分かりにくいですので、以下を例としてもう一度おさらいしておきましょう。

(例)

仮に・・・

  • 休業開始日が5月25日
  • 休業終了日が6月15日
  • 賃金締切日が月末日
  • 賃金支払日が翌月10日
  • 通勤手当・家族手当は月単位で支給

であるならば・・・

「給与」の支払日は6月10日。

6月10日に支給される「給与」は、5月1日~5月31日が計算対象。

この中に含まれる「出生時育児休業」期間は、5月25日~5月31日。

よって、

5月25日~5月31日のいずれかの日に対して、就労の有無にかかわらず、会社独自の取り決めにより支払われた賃金

5月25日~5月31日のいずれかの日に対して 、その期間中に就労した日数・時間数に応じて支払われた賃金

の両方を合計した賃金額が、支給調整の対象となる「給与」の額となります。

ちなみに、支払われた賃金が「完全月給制」の場合は、出勤日数に関係なく「一律、月額支給」となるため、月額賃金の「どの部分?」が「出生時育児休業」の期間に対応しているのか判別することができません。

この場合は・・・

「支払われた賃金額 ÷ 賃金支払基礎日数」により算出した日割り賃金額(小数点以下切捨て)

に「休業期間の日数」を乗じた金額を支給調整の対象となる「給与」の額とします。

いっぽう、「通勤手当」「家族手当」は、5月1日~5月31日を計算対象として「固定額」が支給されており、「出生時育児休業」以外の期間を含んでいることから、その全額が支給調整の対象から外されることとなります。

申請方法について

それでは、最後に「出生時育児休業給付金」の申請方法について見ていきましょう。

「出生時育児休業」は子の出生日翌日から起算して8週間(*)以内に2回に分割して取得することができますが・・・

(*)予定日前に出生した場合は、当初出産予定日の翌日から起算して8週間以内となります。

全ての申請を1回にまとめて行わなければならないこと

出生時育児休業の取得可能期間である、出生日(*)翌日から起算して8週間が経過するのを待ってから申請しなければならないこと

(*)予定日前に出生した場合は、当初出産予定日

休業期間を対象として給与が支払われている場合は、その額についても申請が必要となるため、当該給与締切日を待ってから申請しなければならないこと

に注意して下さい。

支給決定後、約1週間で支給されますが、支給決定までに時間がかかる場合もあります。

なお、ハローワークへの申請期限は・・・

出生後8週間経過日から2カ月を経過する日の属する月の末日まで

となっています。

よって、会社から申請するタイミングが遅ければ、さらに支給が遅れることになります。

休業する方本人には、この点、事前に伝えておいてあげましょう。

雇用保険被保険者 休業開始時 賃金月額証明書

続いて、申請の際に必要となる書類は以下のとおりです。

「出生時育児休業給付金」の支給額を決定するにあたり・・・

支給額算定上必要となる休業前賃金・手当の支払い実績

を証明するため、「雇用保険被保険者 休業開始時 賃金月額証明書」を提出します。

ハローワーク窓口で申請する場合は、賃金台帳・出勤簿(タイムカード)などの確認書類を持参します。

ちなみに、この申請書は、通常の「育児休業給付金」を初めて申請する際に提出するものと同一の書式です。

よって、本件の申請対象である「出生時育児休業」が終了した後に、再度「通常の育休」を取得し「育児休業給付金」の支給申請を行う場合には、この手続きを省略することができます。

育児休業給付受給資格確認票・出生時育児休業給付金支給申請書


「出生時育児休業給付金」を受給するにあたり・・・

支給要件をクリアしているか?

についての確認と、

休業期間中の就労実績・賃金支払い実績がどうであったか?

について確認するため「 育児休業給付受給資格確認票・出生時育児休業給付金支給申請書」を提出します。

ハローワーク窓口で申請する場合は、母子健康手帳のコピー等、育児中であることの証明を持参します。

これらの申請書は、「子の出生日(*)翌日から起算して8週間を経過する日」が過ぎてから提出することができますが・・・

(*)予定日前に出生した場合は、当初出産予定日

休業期間中に支給調整の対象となる「給与」が支払われている場合は、その支払日が経過してからでないと申請できない点に注意して下さい。

今後の法改正見通しについて

産後一定期間の給付金支給率を実質100%へ引き上げる制度が検討されています(令和7年4月 施行予定)

「産後の一定期間」において、両親共に14日以上の(出生時)育児休業を取得した場合に限り、両親それぞれへの給付について「給付率67%の(出生時)育児休業給付金」に上乗せするかたちで、28日間を限度「給付率13%の出生後休業支援給付金(仮称)」を支給し、給付率を合計80%へ引き上げすることが検討されています。

上記の新たな給付金が上乗せ支給される期間は、社会保険料控除も加味した場合、「実質100%」の手取り補償が行われることとなります。

ちなみに、上記の「産後の一定期間」については・・・

  • 男性労働者の場合は子の出生後8週間以内
  • 子を出生した女性労働者の場合は、産後休業開始後8週間以内

となる見通しです。

なお、「ひとり親の家庭」や「配偶者が就業していない」など、「配偶者が育児休業を取得していること」を支給要件として適用できない被保険者に対しては、「両親共に育児休業を取得していること」を支給要件としない方向で検討が進められています。

まとめ

今回は、「出生時育児休業(産後パパ育休)」期間中に支給される、「出生時育児休業給付金」の内容について解説してきました。

「出生時育児休業」制度が施行されたことで、男性労働者の育児参加を後押しする機運は、今後益々高まっていくことと思われます。

そのいっぽうで、運用すべき制度内容が今まで以上に複雑化したのもまた事実です。

お手続きを進める際には、この記事を再読し、ぜひ活用していただければと思います。

なお、「出生時育児休業」制度について、詳しい内容を知りたい方は以下の記事もご参照下さい。

【両立支援等助成金活用のご案内】

従業員の育休取得を推進する中小企業に対しては、非常に手厚い助成金制度が設けられています!

育休関連の助成金制度について知りたい方は、以下のサイトもご参照下さい。
欠員補充コストでお悩みの事業主様には、是非とも知っておいていただきたい内容となっています。

当事務所では、「産休・育休手続ナビゲーション+申請手続代行サービス」を行っております。

メールのみで・・・

  1. お申込み(別途 書面の郵送が必要となります)
  2. 最新の産休・育休制度内容把握
  3. 産休・育休の各種事務手続(代行)

まで、一筆書きで完了させることができるサービス内容となっております。

あわせて・・・

  1. 育休関連助成金の申請サポートも行っております。(助成金のみサポートも可能です)

◆育休推進企業に向けては、育休関連経費を大幅に上回る助成金制度が準備されています。

完全オンライン対応で、就業規則等改定~助成金申請代行まで個別にサポート致します。

  1. 産休・育休取得実績が乏しい中小零細企業のオーナー様
  2. ご多忙につき、「情報収集の時間確保」が難しいご担当者
  3. 業務中断せず、自分のペースでメール支援を受けたい

から大変ご好評いただいております。

全国47都道府県対応

メールのみで 学びながらアウトソーシング!

当サービスをご利用いただくと、以下①~⑥の全てを、一筆書きで完了させることができます。

  1. 産休・育休申出者への相談対応に必要となる最新の制度情報収集
  2. 休業申出書・育休取扱通知書等、各種必要書面の準備
  3. 切迫早産・切迫流産等発生時の傷病手当金(*)、帝王切開時の高額療養費限度額適用認定(*)申請
  4. 出産手当金(*)・育休給付金・社会保険料免除等、産休・育休に必要な全ての申請(手続代行)
  5. 社会保険料引き落しの停止や地方税徴収方法変更等、給与支払事務の変更手続
  6. 職場復帰後の「休業終了時 社会保険料特例改定」(手続き代行)
  7. 「厚生年金保険料 養育期間特例適用」申請(申請書作成のみサポート)

(*)電子申請できない書類は書面作成のみサポート致します。

CLASSY. 2024年2月号(12/27発行) 「“私”のアドバイザー」欄に掲載されました

従業員数が多い企業様に対しては、産休・育休のみに特化したアドバイザー業務の提供も行っております。

アドバイザー業務の内容は、主に・・・

  1. 産休・育休関連手続きに関する常時相談対応(メール対応)
  2. 特殊なケースを含めた各種手続きサポート+申請手続き代行
  3. 次世代法及び女性法(*)による一般事業主行動計画の策定支援
  4. 次世代法及び女性法(*)による年度毎の情報公表等支援
  5. 育休関連の助成金(および奨励金)等選定+申請サポート

(*)次世代育成支援対策推進法・女性活躍推進法

等となります。

年間休業取得者数の見通し等に基づき、完全カスタマイズで契約形態・利用料金等をご相談いただけます。(サポートはオンライン対応のみとなります)

全国47都道府県対応